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法定後見制度 |
法定後見制度とは、『家庭裁判所が、成年後見人等を職権で選任し、判断能力が不十分な状態にある人を保護・支援する制度』です。
そして、法定後見制度には、判断能力の欠缺の程度に応じて、「後見」「補佐」「補助」の3種類があります。 |
法定後見制度の内容:後見(こうけん) |
後見とは、精神上の障害の程度が著しく、判断能力が欠けているのが通常の状態である人(強度の精神障害者等)に代わって、本人の財産上の法律行為を代理して行うことです。
【後見開始の審判】
後見開始の審判の申立ては、本人、配偶者、4親等内の親族、検察官等の一定範囲内の者が本人の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
そして、後見開始の審判を受けた人を「成年被後見人」、家庭裁判所の職権で選任された「成年後見人」が法定代理人になります(民法第8条、第843条1項、859条)。
※審判の申立費用は鑑定料を含めて5万円〜10万円程度。
【代理権の範囲】
後見が開始されると、成年被後見人は日用品の購入や日常生活に関する行為は自分で行うことができます(民法第9条但書)が、それ以外の行為は成年後見人が法定代理人として行うことになります(民法第859条)。
また、成年後見人は、成年被後見人がした法律行為は常に取り消すことができます(民法第9条)。 |
法定後見制度の内容:保佐(ほさ) |
保佐とは、精神上の障害により判断能力が著しく不十分の人が一定の重要な財産上の行為をする場合に、当該行為について同意、取消し等を行うことです。
※日常の買物程度はできるが、重要な財産行為について適切にできない人を保護する制度です。
【保佐開始の審判】
保佐開始の審判の申立ては、本人、配偶者、4親等内の親族、検察官等の一定範囲内の者が本人の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
そして、保佐開始の審判を受けた人を「被保佐人」、家庭裁判所の職権によって「保佐人」が選任されます(民法第12条、第876条の2第1項)。
※審判の申立費用は鑑定料を含めて5万円〜10万円程度。
【保佐人の権限】
保佐人の権限は、同意権(民法第13条1項・2項)、取消権(民法第120条)、追認権(民法第122条)、家庭裁判所の審判により特定の法律行為について付与された代理権(民法第876条の4第1項)があります。
【同意権の範囲】
保佐が開始されると、被保佐人は、民法第13条1項所定の行為及びそれ以外で家庭裁判所の審判によって定められた行為については、保佐人の同意が必要です(民法第13条1項・2項)。
※『民法第13条1項所定の行為』とは
●元本を領収し、又は利用すること
●借財又は保証をすること
●不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること
●訴訟行為をすること
●贈与、和解又は仲裁合意をすること
●相続の承認・放棄又は遺産の分割をすること
●贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること
●新築、改築、増築又は大修繕をすること
●民法第602条に定める期間を超える賃貸借をすること |
法定後見制度の内容:補助(ほじょ) |
補助とは、精神上の障害により判断能力が不十分の人が家庭裁判所の審判によって定められた「特定の法律行為」をする場合に、当該行為について同意、取消し等を行うことです。
※日常の買物、重要な財産行為も一応できると判断される余地もあるが、適切にできるか不安がある人を保護する制度です。
【補助開始の審判】
補助開始の審判の申立ては、本人、配偶者、4親等内の親族、検察官等の一定範囲内の者が本人の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
そして、補助開始の審判を受けた人を「被補助人」、家庭裁判所の職権によって「補助人」が選任されます(民法第16条、第876条の7第1項)。
※審判の申立費用は原則として鑑定料が不要で、意思の診断書で足りるため、後見や保佐よりも安く済みます。
【補助人の権限】
補助人の権限は、同意権(民法第17条1項・2項)、取消権(民法第120条)、追認権(民法第122条)、家庭裁判所の審判により特定の法律行為について付与された代理権(民法第876条の9第1項)があります。
【同意見の範囲】
補助が開始されると、被補助人は、家庭裁判所の審判によって定められた「特定の法律行為(民法第13条1項所定の行為の一部)」をするには、補助人の同意が必要です(民法第17条1項・2項)。 |
法定後見制度のポイント |
●判断能力を失っても、成年後見人等が生活環境と財産を守ります。
●成年後見人等は、本人の意思を尊重し、権限の範囲内で支援します。
●成年後見人等は、健康・安全・生活レベルの維持、犯罪や悪徳商法の被害から守ります。
●成年後見人等による財産管理によって、相続時まで記録が残り、相続でのトラブルを避けることにつながります。 |
法定後見制度利用のポイント |
●家族、近親者などが、本人の記憶能力、判断能力などについて常に注意を払っておいて下さい。
●異常を感じた場合は病院の専門科で診断を受けるようにして下さい。
●判断能力に障害が出るようであれば、成年後見制度利用の準備を行って下さい。
●家族、近親者で検討し、信頼できる後見人の候補者を選び、速やかに家庭裁判所に申立ての手続きを行って下さい。
●元気な頃から、将来の生活における希望、財産の処分などについて、書面等に記録、家族と会話しておいて下さい。
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